「オレ流」張り線講座【実践編】 あるいはSwordfish Mk.I 製作記-その5
以前、「『オレ流』張り線講座【基礎編】」で私流の張り線の手法をご披露しましたが、今回は、現在進めている艦攻艦爆魚雷祭りなどに出展するFairey Swordfish Mk.I を題材に、こりずに「オレ流」張り線講座【実践編】をアップしてみたいと思います。
複葉機の場合、上翼と下翼を含む胴体部分を別々に組み立てます。とくに、下翼にデカールを貼ったり、ディティールを施したりする必要がある場合は、張り線を張った後の作業は困難ですので、この段階ですませておきます。Swordfishの場合は左右の下翼に黒のラインが引かれていますので、これを黒のデカールの細切りで再現しました。
また複葉機キットには一般的ですが、上翼と下翼をつなぐストラット(桁)のパーツが前後一体で上翼に埋め込む形になっていますので、その整形・修正もこの段階で行います(ここは趣味の問題で、ストラットがきっちり棒状に出ていないと気がすまない方は、きれいに整形してください。私は面倒なのであまり真剣にやりません…)。
ここで、一気に上翼を固定したい衝動に駆られますが、じっとがまんします。ただし、仮組みは何度も行って、ストラットの位置は慎重に合わせておきます。タミヤやハセガワのキットは別にして、マッチボックスやフロッグ等の古いキットは、ストラットとこれを受ける穴は、まず合いません。仮組みの段階で前後上下左右からながめて、最もバランスのとれた位置に上翼がおさまるように調整します。ストラットが長い場合は削ればすみますが、短い場合はストラットの下端に細いランナーの薄切りを接着して、長さを延ばします(瞬間接着剤を強引に流し込む方法もあります。私は面倒なので瞬着頼みです…)。
最初に、内側のストラットの直線に近い張り線を施します。外側のストラットは後からでも作業ができますが、内側は上下翼が固定されてからでは作業が面倒になりますので、この段階ですませておきます。
材料は、0.2mm真鍮線。ストラット間にX字上に渡された張り線を、然るべき長さにカットした2本の真鍮線を瞬接で固定することで再現します。真鍮線は現物合わせでカットしますが、左右のストラットで同じ長さの張り線が2本づつありますので、1本の長さが決まったら同じ長さのものをもう1本切り出しておけば作業が効率的です。
まず、上翼のストラットのつけ根にピンバイスで小さな穴を開け、張り線の上側を固定します。ピンバイスの穴は位置決め程度ですので、浅めでかまいません。真鍮線の一方に瞬着をつけて、角度をみながらピンセットで所定の位置に接着します。下翼側は、上翼側が完全に固定されてから、ツマヨウジの先で瞬着をポチッとつけて固めます。
できあがりは、こんな感じです。この段階で黒鉄色に塗装しておくといいでしょう(画像は、塗装前です)。
次に、テグスを使って長めの張り線を再現します。テグスは、1.2号(0.185mm)のマス釣り用のグレーのものを使います。上翼裏側の所定の位置にピンバイス(0.3mm)で穴を開けて、テグスの一端を固定します(貫通させないように注意しましょう)。瞬着はなるべく新しく、硬化スピードの落ちていないものを使います。私は今回、WAVEのハイスピード硬化型を1本おろしました。
穴にさしこんだテグスは、ヒゲノズルを使うか、つまようじの先につけた瞬着で固めます。作業を早く進めるには、硬化スプレーを使うといいでしょう(ただし、これは異様にクサイです)。テグスの端を持って、上翼のパーツがつるすことができれば、十分に固定されていると思います。Swordfishの場合、上翼裏左右両面に各5ヵ所、張り線が出ている(と思われる)ので、計10本のテグスが上翼裏面からぶら下がります。
瞬着での固定の場合、どうしても盛り上げすぎたり、あらぬところにつけてしまったり、多少はパーツを汚してしまいますが、細かいことを気にしないのが漢です。どうにも気になる場合は、デザインナイフで整形し、同色でタッチアップしておくといいでしょう。
なお上翼裏面につけたテグスは、あまり長いと作業するうえでじゃまになりますので、テンションをかけるに十分な長さに、この段階でカットしておきます。
続いて、下翼の所定の位置に、テグスのもう一端を固定する穴を開けます。この穴は、下翼裏側からテンションをかけるので、貫通させます。あまり目立たないように0.3mmまたは0.4mm程度の穴がいいでしょう。
この後、上翼を胴体・下翼を接着します。どんなに仮組みしてもぴったり合わないので、ここは大らかな気持ちで接着します。まずプラ用接着剤で様子をみながら、仮固定します。Swordfishの場合、内側のストラットを固定した後、外側のストラットを調整しました。前から見て、上翼が傾いていないことを確認してから、ストラットのつけ根に瞬着を流し込みます(あぁ、至福のとき…)。
上翼ががっちり固定されたら、ピンセットでテグスの先をつまんで、下翼に開けた穴を通します。テグスの先が下翼の裏から出てきたら、洗濯バサミでテグスも端をはさんで、ゆっくりとテンションをかけ、張り線をピンと張ります。この際、以前にもお話ししたように、ゆっくりテンションをかけてください。一気に力を入れると、上翼に固定したテグスがはずれ、一気に製作意欲が萎えてしまいます。あくまで、ゆっくりひっぱって、見た目でピンと張れていれば、よしとします(後から、線香かタバコの火を近づければ、さらにピンと張ります)。
テグスをはさんだ洗濯バサミをしっかりひっぱりつつ、下翼裏面のテグスの通った穴を瞬着で固定します。この場合、瞬着は多少多めでもいいと思います。肝心なのは、穴の内部に瞬着が充填されて、テグスが完全に固定されることです。この段階では、張ったテグスにたわみが出ないように、硬化スプレーを使うことをオススメします(あぁ、クサイ…)。瞬着が固まったら、余分なテグスをカットします。
一応、たわみがないかどうかを、あらためてチェックしておきます。
なお下翼裏面の穴は、瞬着の小さな盛り上がりのテッペンからテグスの先が飛び出していますが、これは鋭利なデザインナイフで慎重に削り取り、軽くペーパーでならせば目立たなくなります。もともと複葉機の翼はほとんど帆布張りなので、帆布のうねりに合わせる形で、ペーパーがけすれば問題ありませんし、実際、作品を裏返して確認する人もいないと思います。
で、翼の張り線は、こんな感じでできあがり。見た目にはたわみはないようですが、後でもう一度確認して、たわみがみつかったら、線香の火を使って張りを強めようと思います。
長くなりましたが、いかがでしたか? 段取りさえ押さえておけば、意外とスムーズに行くと思いますよ。あとは、多少の汚れやたわみは後で調整できるので、細かいことにこだわらず、大らかな気持ちで作業することがポイントです。私の場合、昨日、奥さんが出かけていたので、ずいぶん効率的に作業できました(笑)。
この後、デカールを貼り、スミ入れおよびウェザリング、魚雷などの小物の作成と接着、尾翼・胴体の張り線およびアンテナ線の設置というプロセスを経て、今月中に完成を目指したいと思います。
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コメント
いつもながら、分かりやすい解説有難うございます。
張線作業、複葉機の1番面倒臭い所(これが無かったらもっとつくれるのに~!)でもありますが、1番楽しいところ(これが無かったら複葉機作んないかも?)でありますね。
ソードフィッシュもいよいよ完成間近か、素晴しい作品ができそうですね。完成した姿、楽しみにしています。
投稿: 腹~・ポッタ~ | 2004.11.15 18:34
こんばんはー
丁寧な解説で分かり易くて勉強になりましたでゴザイマス
来年は複葉機に挑んでみたいと思いますですううう
なので
来年に備えて今からキットを買っておく事に致しますううう
投稿: しょぼんぬ | 2004.11.15 23:40
Kazuさん、こんばんはー。
大変判りやすい解説有難うゴザイマス。基礎編と実践編で第一志望合格間違いなし!位の自信がもてました。(←意味不明)
このBlogを見ている全国1千万人(推定)のよいこの皆さんが複葉機を買いに模型屋へ殺到する悪寒...
このBlogを見ている模型店オーナーの皆さん、複葉機をどどーんと仕入れておいて下さい。バカ売れ間違いなしデス(無責任)
投稿: ドカ山 | 2004.11.16 00:28
腹~・ポッタ~さま、コメントありがとうございます。
張り線は作業するまではメンドくさいですが、できあがると何ともいえない達成感がでますね。
でも、機体の工作にあちこちボロが出てきて、ちょっと鬱な気分になってます…。
ま、完成させることに意義があるということで、メカジキをかたづけて、早くゴスホークに移りたいと思ってます。
投稿: Kazu | 2004.11.16 09:14
しょぼんぬさま、コメントありがとうございます。
来年といわず、年内スタートで複葉機やってみてください(笑)。
複葉機キットは、なさそうで結構あります。
箱を開けて「鬱」となるものも多くありますが、作っちゃえばそれなりに形になりますので、気楽にチャレンジしてみて下さいね~。
投稿: Kazu | 2004.11.16 09:18
ドカ山さん、コメントありがとうございます。
複葉機ファンが少しでも増えるといいですねぇ。
展示会などでも、複葉機はマイナーなジャンルで、あまり作る方を見かけません。
個人的には、この頃の飛行機は、人間の力と機械の力がちょうどバランスして飛んでいたような気がします。
ドカ山さんもスクアに続いて、Po-2がんがって下さいね~。
投稿: Kazu | 2004.11.16 09:23
大変参考になるお話、ありがとうございます。私は、黒の木綿糸を使っています。なるべく細い糸を洗濯はさみを使って吊るし、木工用ポンドを上から下へと摺りこみます。そうすればケバが出ません。張るときは一方の端にピンバイスの穴より大き目のだんごを作ります。少しぐらい強くひっぱっても抜けません。当然通したあとに瞬間接着剤を流し込みます。上の翼を接着したら下の翼かポールに通します。ここでテンションをかけて接着します。最後に上と下の糸を目立たなく修正します。しなくても見苦しくはありません。コストも安く簡単で楽しいですよ。小生は今、複葉機ばかり作っています。
投稿: 中原英明 | 2015.09.21 09:23
中原様、このようなブログにコメントいただき、ありがとうございます。
随分前にこちらでの更新を休止してしおりますが、まだ読んで下さる方がいらっしゃることに感謝しています。
当方は、今48のソードフィッシュを製作中です。新ブログも更新が滞りがちですが、よろしければこちらもご覧ください。
http://aviationflash.blog110.fc2.com/
投稿: Kazu | 2015.09.21 15:00